もしも、もう一度キュピルとジェスターが幻想卿に飛ばされたら(第六話)


キュピル
「ぐっ!」

地面の上を転げ回り、徐々に減速しつつ最後は大木にぶつかって止まった。
数秒後、ジェスターがひらりと着地し、更にその数十秒後にレミリアが飛んできた。

レミリア
「色々と気が変わったわ。昨日の件と一昨日の件。そしてフランの件を合わせてやっぱり殺しておく。」
キュピル
「まーまーまーまー・・・。というか、フランを外の世界に出す事がそんなにまずいこととは思えん・・。普通の子じゃないか。」

キュピルが両手を前に突き出しながら後ろへ一歩、二歩と下がる。
レミリアがズンズンと前に歩き、キュピルもレミリアと一定の距離を保つように後ろへ下がる。

レミリア
「覚悟はいいかしら?」
キュピル
「・・・まぁ、まて。冷静に事の発端を考えてみようか。昨日の件からな。」

レミリアがキュピルに急接近し、顔面を殴ろうとしたが後少しの所で避けられる。
すぐにキュピルが距離を離しまた振り出しに戻す。

キュピル
「フランを連れ出そうとしたら、突然レミリアが現れ殴り飛ばされてしまった訳だ。そこで一つ問おう。
フランを幽閉していた理由は一体何だったのかと。」
レミリア
「あの子はちょっと気が触れてて迂闊に外に出すとまずいのよ。」
キュピル
「俺から言わせてもらえばレミリアの方がよっぽど気が(ry」


レミリアが即座に魔法弾をいくつか飛ばし仕留めようとしたが、一つ一つ弾道を予測して回避する。

レミリア
「あの子の境遇を分っていないようね。あの子の能力は『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』。
でも問題はそこじゃない。外はあの子にしか見えない怖い光に満ちているのよ。」
キュピル
「・・・怖い光?」

キュピルがしかめっ面し、疑問を持った表情を露わにする。

レミリア
「そう。どんな物も生き物も人も全ての存在する物には『目』と呼ばれる核(コア)がある訳。
その目をちょっとした力を加えて破壊すればそれはたちまち爆発したり壊れたり命を失ったりする。
この世界には数多くの物が存在して、あの子にしか見えない沢山の光が見えている。
ふとした原因で目を潰してしまって目の前を通った生き物が死んだり植物が枯れたりする。でもあの子はそれについて気を留めない。いや、楽しむかもしれないわね。
そんなフランを外に連れ出す?あんたそれがどれだけ大変な事か分って言っている?」
キュピル
「待て、それは地下に居ても同じ事なんじゃないのか?」
レミリア
「あの場所は特別。ぱちぇに頼んで特別な結界を張らせているからね。」
キュピル
「言っておくが、人間だってその気になりゃ遺産を簡単に壊してしまう事もあるぞ。当然気にも留めずにな。」
レミリア
「フランは狂暴で身勝手よ。仮に外の世界に遊びに行かせて破壊する遊びを始めても責任取れる?」
キュピル
「責任の問題じゃない。そういう風に良し悪しを教えずに教育させたからこうなっているんだろう?
・・・・世界には沢山の好奇心を煽られる物や未知なる世界が沢山存在している。
人間・・いや、人間だけじゃなく、ありとあらゆる生き物はその謎や好奇心のままに世界を旅して全ての種族は成長してきた。
そこには『楽しい』や『好き』、『喜び』があるからだ。それらを体験した人間達は人、自然、遺産・・大切な物をを守ろう学ぶんだ。
・・・495年もの間ずっと地下に閉じ込められ碌に外の世界を見てこれていないんじゃそういう風に育ってしまってもおかしくはない。
今からでも遅くない。もっとフランには外の世界を見させてやってやれよ!」
レミリア
「わからないのかしら。私達には見えない何百万という無数の光がフランの目の前に漂っているのよ。
話しを聞くだけじゃ分らないと思うけど、常人ならとっくのとうに気が触れてしまうわ。・・いや、あの子も、もう気がふれている。
キュピル、フランを外に連れ出そうというのは好意でやったと思うけどそれはあの子も苦しめているってことを理解しなさい。
そもそも奴隷の分際でよくそんな勝手な行動を取れたものね!!」
キュピル
「光が何だ!光なら俺でもあちこちにあるのが分るぞ!」
レミリア
「・・・・・もう一度忠告するわ。あんたの出る幕じゃない。分った?今分ったら特別に殺さないでおくわ。」

キュピルがしばらく考える。

キュピル
「(・・・あのままフランを放置するのは可哀相だ・・・。地下にずっと幽閉だなんて常人が出来る事じゃない。
レミリア、お前そのものが狂気同然だ・・・。・・・だが、武器がない以上強引な手段を講じてレミリアと戦闘に入りたくない・・。
現時点で戦ったら負けるのは明白だ・・。・・・ここは一旦口先だけの返事にして・・・。)」

キュピルが一歩前に出る。そして。

ジェスター
「よろしい。ならば戦争だ。」
キュピル
「だから何でお前が代弁してんだよ!!雰囲気台無しだ!!

レミリア
「私ともう一度戦おうと言うのね。いいわ。こんなにも月が紅いから、本気で殺すわよ。」
ジェスター
「ふれー!ふれー!きゅ〜ぴ〜る!!」
キュピル
「おーーーまーーーえーーーー!!!あいつマジモード入っちまったじゃねええかーーーー!!なんて事してくれるんだああああああ!!!!!」

ジェスター
「ぎゃぁぁっーーー!!」
レミリア
「さぁ、武器を手に取りなさい。ただし、一切容赦しないわよ。」
キュピル
「武器もねぇ!鎧もねぇ!味方もいなけりゃ援護もねぇ!」
ジェスター
「おらこんな場所いやだぁ〜おらこんな場所いやだぁ〜。」
キュピル
「本当にもう嫌だよ。」

レミリア
「武器がないのね、それなら一撃で仕留めてやるわ。」

レミリアがキュピルに急接近し、爪で斬り裂こうとしてきた。

キュピル
「武器がないから武器くれるかと思ったらそんな事なかった。ジェスター、どうすればいい。」

ジェスター
「はい、十字架。」
キュピル
「おらー!見ろやー!!十字架だぞこらぁっー!!」
レミリア
「効く訳ないでしょ、馬鹿。」
キュピル
「痛っ!」


頭を思いっきり引っ叩かれ体勢を崩すキュピル。

ジェスター
「じゃー、はい。にんにく。」
キュピル
「おらぁー!にんにくだぞこらぁ!!」
レミリア
「だから見せるだけで効く訳ないでしょ!!」
キュピル
「うががががががっ・・・。」


口の中にニンニクを詰め込まれ、吐き出すキュピル。

ジェスター
「いまだ、キュピルー!臭い息!!」
レミリア
「うわっ、くっさっ!!!!」

キュピル
「泣きたい。」


レミリアがキュピルから一旦離れる。

キュピル
「怯んでいる今がチャンスか?おらぁっ!」

キュピルがレミリアに接近し殴りかかる。しかし、ひらりと宙を舞って攻撃を回避する。到底当たりそうにない。

レミリア
「ふふふ、飛んで火に入る夏の虫ね。」

空中から魔法弾を撒き散らし弾幕を張る。急いでその場から離れ攻撃を回避するが一つ致命的な出来事に遭遇していた。

キュピル
「おいおいおい!避けれるがレミリアにダメージ入れる事できないぞ!」
ジェスター
「あ!!こんな所に空き瓶が置いてあるよ!!」
キュピル
「ガノンドロフの魔法弾も弾く事の出来る空き瓶なら。」


レミリア
「ふふふ、後はこのまま疲れた所を仕留めるだけで済みそうね。・・・・ん?」
キュピル
「うおらぁっー!!」


キュピルが魔法弾を空き瓶で打ち返しレミリアの居る場所を狙う。あまりに唐突の出来事だったうえに完全に油断していたため
羽に魔法弾が直撃し地面に落下する。

レミリア
「え、ちょ。」
キュピル
「いまだ!!」

チャンスを逃さず、体勢を整える前に目にもとまらぬ速さでレミリアに接近し飛び蹴りを繰り出す。
しかしその前に再び空を飛びキュピルから離れる。

キュピル
「あー、ちくしょー!」
レミリア
「一体何なのその空き瓶・・・。ただの空き瓶じゃなさそうね。」
ジェスター
「リンクはこの空き瓶に虫を入れたり、虫が入ってた瓶に薬入れたりして飲んでるからね〜。」
キュピル
「それは瓶が凄いんじゃなくてリンクが凄い。」

レミリア
「でももう油断しないわ。次こそ仕留めてみせる!」
ジェスター
「あ、レミリアが第二形態になろうとしているよ。」
キュピル
「ボスって基本的に第二形態までは必ずあるよね。イカス背景に変えながらとか。」
レミリア
「変形しないわよ。」


微妙に真剣なムードではない戦いが続く。それはキュピルが自分の愛剣を持っていないからか。
だがどちらにしても明白なのはこのままでは攻撃の手段が非常に限られていると言う事。

キュピル
「くっそ、しかしこのままじゃ・・・。じり貧だ・・・。」

その時。

「おーーーー、見つけたぜ。」

キュピル
「ん、この声は?」
魔理沙
「居たぜ!!キュピル、この剣返すぜー!あとついでに完成した魔法見てくれよ!」

魔理沙が箒にぶら下げていたキュピルの愛剣を手に持ち、地面に向けて投げた。
レミリアがそれを叩き落とそうとしたが、その前にキュピルが渾身の力でジャンプし空中で受け取る。
レミリアの放った魔法弾が空中に居るキュピル目掛けて飛んでくるが剣を振り魔法弾を弾く。

魔理沙
「おいおい、レミリアと戦ってるのかー?殺されても知らないぜ。」
キュピル
「大丈夫だ、この愛剣さえあれば何とでもなる。」
レミリア
「言うわね。」
魔理沙
「せっかく神鳥の羽とウィングとやらで新しく完成した魔法をお披露目しようと探してたのに、これじゃ見せる雰囲気じゃないな。ウィングで帰るぜ。」

そういうと魔理沙は一瞬でその場から消えた。ウィングと発言していたという事は既に魔法効果を解析し、自宅に戻る魔法でも開発したのだろうか。
しかし今はそんな事を推測している場合ではない。
地面に着地すると今度はキュピルの方から接近し、低飛行しているレミリアに突きを繰り出す。
が、またしても高度を上げられ攻撃を回避する。

レミリア
「余興はもう十分。そろそろ行くわ。」

レミリアが再び宙に浮き上がる。懐からカードを取り出したのが見えた。

キュピル
「くそ、出たな!スペルカード!だが発動させなければ!!」

キュピルが懐からディバンから譲り受けたフックショットを取り出し、レミリアの足に引っ掛ける。

レミリア
「わっ、ちょっと!!何でそんな物持ってるのよ!!」
キュピル
「初回幻想郷から脱出した後、俺の住む世界でも色々あってね。こう見えてもアノマラド大陸を破滅に導こうとした諸悪の根源を打倒した事もあるんだよ!!」

レミリアの足に絡まった鎖を力強く引っ張り地面に引きずり降ろす。羽ばたいて宙に浮こうとする力よりキュピルの引き寄せる力の方が強いとレミリアが悟ると
宙へ逃げようとするのではなく、逆に地面へ急降下しキュピルを爪で引き裂こうとしてきた。

キュピル
「まだ接近戦の方が希望はある。」

レミリアの攻撃を剣で受け流し、右腕を斬ろうとする。しかし爪で攻撃を弾き返し、再びキュピルの喉元を突き刺そうとする。
左足を上げ、喉元に突き刺さる前にレミリアの右腕を蹴り位置をずらす。

レミリア
「やるわね。あんたがどこまで強くなったか確かめてたけど、思った以上に状況判断能力が向上している。」
キュピル
「この剣一本さえあれば俺は誰にだって負けねぇっ!!」
レミリア
「その余裕を失くさせてやるわ!」
キュピル
「見せてやる・・・!!!」

キュピルが気合を込めて一度叫ぶ。

キュピル
「必殺!カトラスダンス!!」
ジェスター
「まだジョリーロジャーの方がよかったんじゃないの?」
キュピル
「ガッツが足りない。」

ジェスター
「技を繰り出すのにガッツが必要っていうゲームシステムも結構斬新だったよね。っていうか、キュピル何だから月の浄化って技の方がよかったんじゃないの?」
キュピル
「あれはファイナが・・って、戦闘中にこんな話ししている場合か!というか、キュピル違いだ。大元の元ネタはそうなんだが

レミリア
「隙だらけよ。」
キュピル
「ぐあっ!ちゃんとカトラスダンス繰り出せていれば勝てた。

話しをしている隙にレミリアに至近距離で大火球弾を撃ち込まれ遠くへ吹き飛ぶキュピル。

キュピル
「熱っ・・!服に火が・・くそっ!」

地面の上を転げ回り火を消し止めようとするが中々消えない。

レミリア
「ふふふ、そのまま灰になりなさい。」
ジェスター
「あー!!今助けるからちょっと待っててー!」

ジェスターがポケットから笛を取り出す。

キュピル
「えっ、おまえ何時からジェスター種の魔法を唱えられるように!!?」
ジェスター
「A ▽ △  A ▽ △」
キュピル
「ただの演奏かよ。」


『ジェスターは嵐の歌を演奏した!』

ジェスター
「ららららら〜♪」
キュピル
「最初から演奏しろよ、レミリアこれで終わりじゃねーか。」

ジェスター
「あ゙ぁぁん!?」

キュピル
「あのぐるぐるさんのマジギレは幼少時代トラウマだった。」

レミリア
「何?」

突如雨雲が発生し大雨が降り注いだ。キュピルの服に燃え移った火は一瞬で消える。

レミリア
「うっ、雨・・・・!!!」
ジェスター
「吸血鬼は流れる水に触れる事ができないっていう伝記があるんだっけ?」
キュピル
「まぁ壁みたいな物らしい。多分今のレミリアの状況は壁に押しつぶされているような状況なんじゃないのだろうか。」

レミリアが両手で帽子を押さえながらその場に座り込む。愛らしい。

キュピル
「よーし、今がチャンス!!」

剣を構え突き刺そうとした瞬間、雨が止んだ。

キュピル
「え、早くない?」
ジェスター
「元々あれって持続性ないよ。」

雨が止んだ事が分ると即座にレミリアが飛び上がりキュピルから距離を離す。
眼光鋭い眼差しでキュピルを睨む。

レミリア
「・・・・・・・。」
キュピル
「・・・マジギレしたぞ。・・・来るぞ!」
レミリア
「『紅色の幻想郷』」

突如レミリアの周辺から赤い魔法弾が渦潮を描くかのように飛んできた。
これまでの弾幕とは比較にならない程の多さで、弾一つ一つがでかい。
大きな魔法弾からは更に小さな魔法弾をいくつも飛ばしているのが分る。

この攻撃を見たキュピルもレミリア同様、一気に本気モードへ入り無言で弾幕の中に突っ込んで行った。
前方、横から飛んでくる無数の弾幕を剣一本で弾く、斬るなどを行って相殺し合いながら突き進む。
一定距離まで接近すると高くジャンプしレミリアの真上を取る。

レミリア
「!」
キュピル
「もっと立体的な攻撃を仕掛けるべきだ。」

レミリアの頭上を取ると剣を下に向け、一気に急降下する。

レミリア
「馬鹿ね・・・。普通の人間が空中で自由に動けると思ってるの?さぁ、避けれるものなら避けてみなさい・・・!」

レミリアが懐から更に別のスペルカードを取り出し、急降下するキュピルに向けて発動する。

レミリア
「運命『ミゼラブルフェイト』」


レミリアから突如赤く光輝く先端の尖った無数の鎖が飛んできた。
一直線に飛んで来ている訳ではなく、カーブを描きながらキュピルに接近し全方向から一斉にぶつかってきた。
先に飛来してきた鎖一本を踏みもう一度高くジャンプして軸をずらそうとする。ところが鎖はもう一度カーブを描き
キュピルを追尾しながら再び飛んできた。

キュピル
「くそ、誘導か。」

レミリアはずっと集中して詠唱を続けている。どうにかしてレミリアに接近出来れば・・・。
次々とキュピル目掛けて飛んでくる鎖を斬る、踏む、身を翻して回避するなどを行い突き刺さらないように懸命に避け続ける。
しかしその結果、レミリアの頭上から離れてしまい攻撃のチャンスは完全に失われてしまった。

キュピル
「(この攻撃・・・威力が高すぎる・・!迂闊に剣で防いだら剣が壊れる・・・!)
ジェスター!!!一瞬だけでいい!レミリアの気を引きつけてくれ!!っていうか嵐の歌演奏し続けてくれ!!
ジェスター
「分った。」

ジェスターがもう一度笛を取り出し嵐の歌を演奏する。

ジェスター
「えーっと、」

カーン

ジェスター
「あ、間違えた。」

カーン

カーン

カーン


キュピル
「もういい。さっきのは奇跡だったのな。」


キュピルが左手でフックショットを構え狙いを定める。
まるで意思を持って群れをなしている鎖達がカーブを描いた事によって空いた隙間にフックショットを発射しその奥にある樹木へ突き刺す。
即座にスイッチを押し、高速で隙間を抜け地面へ着地する。
鎖が180°転換しこちらへ再び追撃してくるのに数秒かかりそうだ。更にフックショットを構えレミリアに向けて発射する。
発射した瞬間レミリアが詠唱を中断し、手でフックショットを弾いた。

レミリア
「空飛べない癖に妙な挙動をしてくれるわね・・・。いらつくわ・・。」
キュピル
「帰ったらディバンにお礼を言わないとな・・・。」
レミリア
「(このまま安全な攻撃を続けても一向に蹴りがつきそうにないわね。多少リスクを背負ってでも確実に仕留められる攻撃を繰り出す必要がありそうね・・・。)」
キュピル
「(・・・大技が来る。)」

レミリアが一瞬宙に浮くと、直後にレミリアの左手に赤い光が集結しだす。

キュピル
「(見たことある。確かスピア・ザ・グングニグルだったか。盾さえあればまた弾き返してやったんだが・・・。)」
レミリア
「あの時は訳のわからない盾で弾き返されたけど盾のない今ならどうかしら?
神槍『スピア・ザ・グングニグル』」


レミリアが魔力を込めた大きな槍を目にもとまらぬ速さで投げつけた。空気が振動し木々の葉が強風が吹いたかの如く揺れ動く。
瞬きした瞬間には既に槍はキュピルを通りすぎていた。

ジェスター
「・・・・あれ?コントロールミス?」
キュピル
「所詮一直線に飛んでくる攻撃何かは肩の動きを見れば何処に飛んでくるか予測突く。事前に動いて回避したまでさ。」
レミリア
「それはどうかしら?」
キュピル
「え?」

突如、背後からキュピルの背中、腕、足に何かが突き刺さった。

キュピル
「何っ・・!?」

刺さったのは大分前にレミリアが詠唱して召喚した先端の尖った赤い鎖。詠唱が中断した所で消えた訳ではなかったようだ。
と言う事はスピア・ザ・グングニグルはキュピルを引き付けるための囮?

キュピル
「(やべ・・・。不覚を取った・・・。)」
レミリア
「ふふん。やっぱり本気を出すまでもなかったって事ね。」
キュピル
「本当は本気出してたんじゃないのか?」
レミリア
「私が本気を出したら幻想郷の一つや二つぐらい吹き飛ばしてやるわよ?」
キュピル
「んなアホな・・。あの赤い霧を出していた事件の時はどうして俺勝てたんだ・・・。」
レミリア
「単純に私のスピア・ザ・グングニグルを跳ね返してきたのが効いたのよね。あれは本当に幻想郷吹き飛ばすつもりで投げたから。」
キュピル
「(この世界が吹き飛ぶ程の攻撃を受けて平然と生きていたって・・・吸血鬼恐ろしすぎるだろ・・・!)」
レミリア
「さーて、これまでのお返しをしないとね。」

レミリアが両腕を広げるとキュピルに突き刺さっている赤い鎖が爆発した。

キュピル
「えええい、やけっぱちだ!!」
レミリア
「え。」

キュピルの背面に全て赤い鎖が刺さっていたため、爆発した事によってキュピルが前方に大きく吹っ飛ぶ。
人間ではとても加速しきれない速度で吹っ飛び、レミリアにタックルを決め転倒させる。

キュピル
「このおおお!!!!」

赤い剣をレミリアの顔面に向けて突き刺そうとした瞬間、突如謎の力で吹き飛ばされ大木に叩きつけられる。

キュピル
「ぐぁっ!?」
ジェスター
「あれ?何が起きたの・・?」

レミリアが揺らめきながら浮き上がる。さっきまでとはオーラが全く違う。

レミリア
「・・・ああ・・あんたが来てからほんっっっっっとに厄日が続くわね・・。
スペルカードも使えない、空も飛べない、ましてやこの世界の住人でもないただの人間に一瞬でも押されるのは心底腹が立つ。」

スピア・ザ・グングニグルを投げつけた時と同じように木々がざわめき出す。
レミリアがただそこに居るだけで空気が振動し、全ての生き物が良からぬ天災がこれから起きると本能的に感じ恐怖を覚える。
ジェスターが木々の後ろに隠れ様子を見る。一方、キュピルは即座に起き上がり剣を構え直す。

レミリアの血走った眼、浮き出た血管、強風が吹いているかのような威圧感。
今まさにキュピルは悪魔を目の前にしている。

レミリア
「・・・恐怖に怯えていない所がまた腹立たしいわ。」
キュピル
「もっと怖い物を見てきたからな。」

眼光鋭い眼差しでキュピルを睨みつける。確実に仕留める、という目だ。
一瞬だけ装備の不安が頭をよぎり恐怖という名の足枷がつく。

レミリア
「・・・・・・違うね。怯えてる。」
キュピル
「むぐっ・・・・。」

一歩後ろに下がるキュピル。レミリアが血管の浮き出た左手を高々と上げもう一度スピア・ザ・グングニグルを繰り出そうとする。
だが、先程出した時と違って圧倒的に魔力の集まり方が違う。
恐怖に魅了され巨大な槍が形成されていく所をキュピルはただ突っ立って見る事しか出来なかった。

キュピル
「(・・・今までレミリアの事を、可愛げのある小悪党だと思っていたがこれを見てしまうとその考えを180°変えざるを得ない・・・。今の奴の姿は恐怖の化身そのものだ・・・。)」
レミリア
「死ね。」


レミリアが宙に浮いている超巨大な神槍をキュピルに向けて投げつけた。
もはやそれは槍ではなく巨砲。キュピルからは10mもの巨大な円が高速で接近してきているように見えた。

キュピル
「まずっ・・・!?」
レミリア
「ハーッハッハッハッハ!!」
ジェスター
「キュピル!ほら!!カオスエメラルド!!」
キュピル
「それ一個じゃ足りねーよ!!つーかスーパーキュピルになるとでも思ったか!?」

ジェスター
「ほら、着弾まであと2秒だよ。早く案考えないと。」
キュピル
「あと二秒しかないのに、こんな会話する余裕がどこにあるんだ。」
ジェスター
「死の直前になると時間が止まったように感じられた・・って表現とかあるじゃん。今そんな感じ。」
キュピル
「ご都合主義に今は感謝しよう。
で、あれどうする気だよ。」
ジェスター
「空きビンで跳ね返す。」
キュピル
「ええい、ままよ!!」


キュピルが空き瓶を振り超巨大なグングニグルを打つ。するとグングニグルが跳ねかえりレミリアに向かって飛んで行った。

レミリア
「え゙っ。」
キュピル
「あ、空きビンが割れた。」

レミリア
「ちょ、タイム・・・!」

レミリアがもう一度グングニグルを召喚し相殺しようとしたがその前に跳ね返ってきたグングニグルが突き刺さった。その直後グングニグルは爆発しレミリアを遠くへ吹き飛ばした。

キュピル
「おーい、大丈夫かー。もうこんな不毛な殺し合いやめよう。」
レミリア
「うぐぐぐぐ・・・。こ、こんな展開は決して・・・。」
ジェスター
「ジャン・リュック・デュバル?ナントカンビナルシュンカンナノダ・・・」
レミリア
「違うわよ。」

キュピル
「(というか、つい最近全く同じ台詞を何処かで聞いたな・・・。
・・・やれやれ・・・。とにかく色々助かったな・・・。)」
レミリア
「一度・・・だけじゃなく二度も・・・自分の攻撃でやられるなん・・て・・!!!
流石は私の攻撃ね・・・。」
キュピル
「突っ込まないぞ。


キュピルがうつ伏せに倒れているレミリアに手を差し伸べる。

キュピル
「レミリア。どうやってレミリアが貴族になり、紅魔館の主となったかは知らないが、たまには仲の良い者だけじゃなくてもっと普通の奴とか、話しをしない奴とか。
そしてフランともよく話しをしてやってくれ・・・。」

レミリアはキュピルの手を借りず、その場で立ち上がる。しかし姿勢がおぼつかない。

レミリア
「あんたに言われると反抗したくなるわね・・・。」
キュピル
「子供かっつの・・・。」

よろめき、倒れそうになったレミリアの腕を掴みしっかりと立たせる。

キュピル
「約束はしていないが、一度だけフランを借りるぞ。」
レミリア
「断る。」
キュピル
「・・・心配か?」
レミリア
「当たり前じゃない。」
キュピル
「・・・だったら、レミリアもついてきたらどうだ?いざとなれば自分で色々好きなように出来るだろ?」
レミリア
「・・・・・・・。」
キュピル
「俺の事、敵だと思っているだろうけど・・・。ただ二人の役に立ちたいだけなんだ。」

レミリアがしばらく考え、そして。

レミリア
「・・・あーーーーもうーーーーー!!!!ガブッ!!!!」
キュピル
「いってえええええええええええええええええええ!!!!!!!!」


レミリアが思いっきりキュピルの手を噛む。ゴリッと歯が骨の上を滑る鈍く痛い音が響いた。

キュピル
「てんめっ・・・!」
レミリア
「思いっきり噛みついてスッキリした。もういいわ。好きにしなさい。その代りフランが外で暴れても全部キュピルが責任取りなさいよ。」
キュピル
「・・お、おお!勿論だとも!」
レミリア
「それともう一つ。それでもフランの姉として色々心配だから私も連れて行く事。異論があったらまた噛むわよ。」
キュピル
「噛むのはもう勘弁してください。」








・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




霊夢
「え?結局フランもレミリアも外の世界に行くの?・・・レミリアが折れるなんて珍しいのね。」
レミリア
「何とでもいいなさい・・。単純に私もこいつの住む世界が少し気になっただけよ。」
フラン
「わーいわーい!夢にまで見た異世界だよ!」
ジェスター
「異世界を渡り歩いたこの私が色んな所案内するよ〜?」
フラン
「ほんと〜?」
キュピル
「(この二人何か似てるな・・・。)」

霊夢
「フランとレミリアも行くんだったらあのスキマ妖怪に頼らなければいけなくなるわよ。
こっちから向こうへ行くのは簡単だけど、私単体の力で向こうからこっちへ戻るのは無理。」
レミリア
「大丈夫よ、ぱちぇにもう頼んであるから。」
霊夢
「(・・・ま、山のどっかの連中たちも神社ごとこっちへ移動してきてるし、思いのほか方法は一杯あるんだろうね・・・。)
えーっと、んじゃ博麗結界を通り抜ける準備するわよ。念のため確認しておくけど行き先は日本であってるわよね?」
キュピル
「え?アノマラド大陸なんだが・・・。」
霊夢
「はぁ?何処?」


・・・・・。

・・・・・・・・・・。

霊夢
「・・・あー、何?もしかして日本以外の所から来た人達?」
キュピル
「アノマラド大陸っていう世界から来たんだが・・・。」
霊夢
「あー・・・。それは私じゃなくて紫に頼まないと無理ね。ここから外に通じてる世界は一つだけだもの。ある時点で現代から切り離した世界・・・。
それがここ幻想郷だから。」
キュピル
「・・・・えーっと、それはつまり・・・。」
ジェスター
「残念!キュピルの冒険はまだ終わらない!!やったー!」
フラン
「えーーーー!!!!」
レミリア
「・・・はぁ・・・何か・・色々台無しっていうか・・・拍子抜けね・・・。」
キュピル
「・・・え、えーっとー・・・その紫って方は・・・すぐに元の世界に返してくれますか・・?」
霊夢
「気難しい妖怪よ。最近会ってないからもしかすると冬眠してるかもね。最悪半年は諦めなさい。」
キュピル
「オーマイガッ!!!?」




キュピルの受難は続く



続く

キュピル
「さ、最終回じゃない時点で分ってたよ・・!!ええい!半年も待てるか!!すぐに叩き起こしてやる!!」
霊夢
「あんた死ぬわよ。」



続く


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